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2015年2月22日口腔乾燥症をテーマに、
埼玉県歯科医学大会で発表を行いました。


埼玉県歯科医学大会でのポスターパネルの
前に立つ、岩本院長(右)と永石先生(左)

平成27年2月22日、「口腔乾燥症(ドライマウス)に関する越谷市歯科医師会の新たな取り組み」について、下記のような内容を埼玉県歯科医学大会にて報告してまいりました。

《はじめに》

近年、口腔乾燥症(ドライマウス)が増加傾向にあるといわれている。口腔乾燥症の原因としては加齢、内服薬の副作用、ストレスなどいろいろな要因が関わっているとされ、口腔乾燥症が発症すると、う蝕、歯周病、粘膜疾患、摂取機能障害などが引き起こされやすくなる。

この口腔乾燥症についてはシューグレン症候群、抗がん剤治療の副作用による口腔乾燥症患者などについての実態報告はあるが、一般市民を対象とした検診および実態報告はきわめて少ない。

今回、我々は越谷市と共催している歯科健康フェアにおいて一般市民の方を対象とした口腔乾燥に関する実態調査を行ったので報告する。



《対象》

対象は2014年月8日(日)越谷市立保険センターにて開催された第19回歯科健康フェア(越谷市、越谷市歯科医師会共催)での口腔乾燥検査コーナーへの来場者123名である。内訳は男3名、女89名(不明3名)、年齢は9歳〜80歳(平均46.6歳)(不明4名)であった。



《調査項目》

(1) 被験者に口の乾燥に関する症状(自覚症状)について、アンケート用紙に記載してもらった。口腔乾燥感、口腔乾燥感の頻度、食物摂取困難、唾液の粘稠度について①全くない、②たまにある、③よくある、④常にある、で回答。

(2) 口腔水分計ムーカス(以下ムーカス)により、舌尖から約10mmの舌背中央部の湿潤度測定を行った。センサーを200gの測定圧で垂直に圧着して測定し、3回測定値の中央値をその代表値とした。口腔内乾燥、口腔内発赤、舌乳頭萎縮について、なし(0)、軽度(1)、中等度(2)、高度(3)、のスコアで判定した。



《結果》

口腔乾燥の自覚症状は118名中109名にあった。ムーカスによる口腔乾燥判定では乾燥5名、境界域28名、正常85名であった。性別での有意差はみられなかった。年齢についても有意差はみられなかったが高齢になるに従い測定値は低くなる傾向がみられた。乾燥と判定された5名は視診でも乾燥を認め、このうち測定値の低い2名には舌乳頭の萎縮もみられた。

ムーカスの測定値と自覚症状との関連性では口腔乾燥感の頻度にやや相関がみられた(r=—0.23)が、それ以外はほとんど相関はみられなかった。

ムーカスの測定値と他覚所見スコアとの関連性では口腔乾燥との間に強い相関がみられ(r=—0.75)、舌乳頭萎縮との間にやや相関がみられた(r=—0.37)。



《考察》

口腔乾燥の検査器具として今回用いたムーカスは簡便に検査が出来、その客観性はすでに報告されている。ムーカスの測定値と自覚症状、他覚初見の関係性を調べてみると測定値と自覚症状には相関はほとんどみられず、他覚所見とは相関がみられた。よって他覚所見の中でも口腔乾燥、舌乳頭萎縮は診断の指標となることが示唆された。

口腔乾燥を訴える方は多いが自覚症状があってもムーカスの測定値と他覚所見の口腔乾燥、舌乳頭萎縮の確認により、その診断をするべきである。

口腔乾燥症について、今回のような一般市民を対象とした実態調査は今までその報告はほとんど無かったので、貴重で意義あるものだったと思われる。